生成AI・ツール活用 / 2026-06-17

中小企業のAI担当者は、詳しい人より業務を聞ける人から育てる

生成AIを会社で使っていきたい。 でも、社内に詳しい人がいない。 誰を担当にすればいいのか分からない。 AIに強い人を採用した方がいいのか、外部に丸投げした方がいいのか、それとも今いる人で何とかできるのか。 中小企業や小規模事業者ほど、...

中小企業のAI担当者を業務を聞ける人から育てるアイキャッチ

生成AIを会社で使っていきたい。

でも、社内に詳しい人がいない。

誰を担当にすればいいのか分からない。

AIに強い人を採用した方がいいのか、外部に丸投げした方がいいのか、それとも今いる人で何とかできるのか。

中小企業や小規模事業者ほど、ここで止まりやすいと思っています。

中小機構の 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月) でも、AI導入は2割を超え、導入済み企業では生成AIの活用が特に進んでいると整理されています。

一方で、同じ調査では、導入の阻害要因として「社内のIT/AIノウハウ不足」が大きな割合を占めています。

つまり、AIを使いたい会社は増えている。

でも、社内で誰が進めるのかが決まっていない。

このズレが、いまかなり大きいです。

ただ、僕は最初のAI担当者に、いきなりAIにめちゃくちゃ詳しい人を置かなくてもいいと思っています。

もちろん、詳しいに越したことはありません。

でも最初に必要なのは、モデルの仕組みを説明できる人でも、最新ツールを全部知っている人でもありません。

最初に必要なのは、現場の仕事を聞いて、AIに渡せる形に整理できる人です。

中小企業のAI担当者は、AIに詳しい人より、業務を聞ける人から育てた方が現場に残りやすい。

今日は、生成AIの社内担当者をどう育てるかを、小さな会社向けに整理してみます。


AI担当者に最初から専門家を置こうとすると止まる

AI専門家探しで止まるのではなく今いる人から小さく始めるイラスト
AI専門家探しで止まるのではなく今いる人から小さく始めるイラスト

AI担当者という言葉を聞くと、かなりハードルが高く見えます。

Pythonが書ける。

機械学習が分かる。

API連携ができる。

セキュリティや法務も分かる。

社内研修もできる。

最新ツールも追っている。

ここまでできる人を探そうとすると、ほとんどの小さな会社では詰みます。

いや、そんな人いたら取り合いです。

しかも、仮に外部の専門家を入れたとしても、社内の仕事の細かい事情まではすぐに分かりません。

誰が何を見て判断しているのか。

どの情報は外に出せないのか。

お客さんに返す言葉の温度感はどれくらいか。

請求、問い合わせ、面談、提案、契約、納品のどこで詰まりやすいのか。

このあたりは、社内の人がいちばん知っています。

AI導入で最初に必要なのは、難しい技術の理解よりも、仕事の流れを言葉にすることです。

以前書いた 中小企業の生成AI導入は、ツール選びより最初の業務テーマから考える でも、最初に決めるのはツール名ではなく業務テーマだと書きました。

AI担当者も同じです。

最初から「AIに詳しい人」を探すより、まず「社内の業務テーマを集められる人」を決める。

その人が、AIを使う仕事、使わない仕事、試してみたい仕事を整理する。

ここから始めた方が、ずっと現実的です。

特に中小企業では、AI担当者を専任で置けないことの方が多いはずです。

営業をしながら。

総務をしながら。

社長自身が見ながら。

既存業務の一部としてAI活用を進める形になります。

だからこそ、最初の役割を大きくしすぎない方がいいです。

「社内AI責任者」みたいな名前にすると、急に重くなる。

最初は「AI相談窓口」くらいで十分です。

社内の困りごとを集める。

試したことを記録する。

危ない入力を止める。

うまくいった使い方を共有する。

このくらいから始めれば、専門家でなくても動けます。

AI担当者に必要なのは、詳しさより業務を聞き取る力

AI担当者が現場の人から業務の困りごとを聞き取り付箋で整理するイラスト
AI担当者が現場の人から業務の困りごとを聞き取り付箋で整理するイラスト

では、最初のAI担当者はどんな人が向いているのか。

僕は、次の3つを見ます。

1つ目は、人の話を聞けること。

2つ目は、仕事の流れを整理できること。

3つ目は、分からないことを分からないまま放置しないこと。

AIの知識は、あとから足せます。

でも、現場の話を聞かずにツールだけ入れる人は危ないです。

たとえば、問い合わせ対応をAIで効率化したいとします。

このとき、担当者がいきなり「AIで返信文を自動生成しましょう」と言うと、たぶん現場は不安になります。

どの問い合わせに返すのか。

営業メールやスパムはどうするのか。

料金の話はどこまで書くのか。

日程調整URLを誰に送るのか。

個人情報はどこまでAIに入れるのか。

お客さんの言葉づかいに合わせるのか、会社の基準に合わせるのか。

このあたりを聞かないまま自動化すると、便利になる前に怖くなります。

AI担当者の最初の仕事は、答えを出すことではありません。

問いを集めることです。

「この作業、毎回どこで迷っていますか」

「AIに任せたいのは、下書きですか、分類ですか、確認ですか」

「最終判断は誰がしますか」

「間違えたら困る部分はどこですか」

「入力してはいけない情報は何ですか」

こういう質問を、現場に投げられる人が強いです。

AI活用は、プロンプトを書く前に、業務を聞くところから始まります。

ここを丁寧にやると、生成AIの使い方はかなり見えてきます。

逆に、ここを飛ばすと、どれだけ便利なツールを入れても定着しません。

AIに何を頼むかが曖昧なままだからです。

カタチ舎で大事にしている「言語化」も、まさにここです。

AI担当者は、社内の仕事をAIに置き換える人ではありません。

社内の仕事を、AIが手伝える粒度まで言葉にする人です。

この違いは大きいです。

最初の役割は、使い方を教える人ではなく相談を集める窓口

AI担当者が社内の相談カードを集めて小さな窓口として整理するイラスト
AI担当者が社内の相談カードを集めて小さな窓口として整理するイラスト

社内AI担当者を決めるとき、多くの会社は「使い方を教える人」を置こうとします。

それ自体は悪くありません。

でも、最初から研修担当にしすぎると、AI活用が講座で終わりやすいです。

ChatGPTの基本操作を教える。

プロンプトの書き方を教える。

便利な使い方を紹介する。

これだけだと、受けた人はその場では「便利そう」と思います。

でも翌週には、いつもの業務に戻ります。

なぜか。

自分の仕事のどこで使うかまで落ちていないからです。

だから、最初のAI担当者は、先生より窓口にした方がいいです。

社内から相談を集める窓口です。

「この作業、AIで楽になりますか」

「この文章、AIに下書きしてもらっていいですか」

「この情報は入れても大丈夫ですか」

「この出力、どこを直せばいいですか」

こういう小さな相談が集まる場所を作る。

それが、担当者の最初の価値です。

相談が集まると、社内の本当のニーズが見えてきます。

議事録をまとめたい。

問い合わせを分類したい。

提案書のたたき台を作りたい。

FAQを整理したい。

社内マニュアルを作りたい。

日報や面談メモを次アクションに変えたい。

こうした相談を一覧にすると、「どの業務から試すべきか」が見えます。

これは、AI担当者が一人で考えるよりずっと正確です。

現場が困っていることから始めるので、導入後に使われやすい。

そして、相談を受けるたびに記録を残す。

どんな相談だったか。

AIに何を頼んだか。

入力した情報は安全だったか。

出力はどこを直したか。

次回も使えそうか。

この記録が、社内のAI活用ノウハウになります。

以前の記事 生成AIの業務自動化は、いきなり連携より社内メモの型化から始める でも書いた通り、いきなり連携を作るより、まず毎回同じ形でメモを残せるようにする方が大事です。

AI担当者の育成も、ここに近いです。

担当者を育てるとは、すごいプロンプトを書けるようにすることではありません。

相談を受けて、業務メモにし、試し、記録し、次に使える形へ直す。

この流れを回せるようにすることです。

30日で育てるなら、業務メモ・入力ルール・試用ログをセットにする

30日間で業務メモと入力ルールと試用ログを並べてAI担当者を育てるイラスト
30日間で業務メモと入力ルールと試用ログを並べてAI担当者を育てるイラスト

AI担当者を育てるなら、最初の30日は大げさな研修より、運用の型を作る期間にした方がいいです。

おすすめは、3つのセットです。

業務メモ。

入力ルール。

試用ログ。

この3つを、30日で小さく回します。

まず業務メモです。

AIで試したい業務を、毎回同じ形で書きます。

たとえば、こんな項目です。

  • 業務名
  • 今困っていること
  • AIに頼みたいこと
  • 入力する情報
  • 入力しない情報
  • 出力後に人が確認すること
  • 成功したと言える状態

これだけで、かなり整理されます。

次に入力ルールです。

AIに入れてよい情報、確認してから入れる情報、入れない情報を決めます。

ここは、前に書いた 生成AIの社内ルールは、禁止より入力ルールから考える とつながります。

社内ルールというと、禁止事項を並べたくなります。

でも現場で使うには、「この情報は入れてよい」「これは伏せる」「これは入れない」という判断表の方が動きやすいです。

最後に試用ログです。

AIを使ったら、結果を残します。

うまくいったか。

どこを直したか。

次も使うか。

誰が確認したか。

危ない入力や出力はなかったか。

このログがないと、AI活用は「使った気がする」で終わります。

逆に、ログが残ると、社内の判断材料になります。

どの業務は向いているのか。

どの業務はまだ人が見た方がいいのか。

どの入力ルールを直すべきか。

どのプロンプトは共有できるか。

30日後に見るべきなのは、AI担当者がどれだけ詳しくなったかではありません。

相談が何件集まったか。

試した業務が何件あるか。

続けたい業務がいくつ残ったか。

危ない使い方を止められたか。

このあたりです。

AI担当者の育成は、知識テストではなく運用テストです。

30日で完璧な担当者を作る必要はありません。

まず、社内でAI活用を話せる場所を作る。

試したことを残す。

次に直すことを見つける。

この小さな循環ができれば、十分に前進です。

一人に背負わせず、社長・現場・外部伴走で確認する

AI担当者を一人にせず社長と現場と外部伴走者が三角形で支えるイラスト
AI担当者を一人にせず社長と現場と外部伴走者が三角形で支えるイラスト

ここで大事なのは、AI担当者を一人にしないことです。

社内AI担当者を決めた瞬間、その人に全部集まりがちです。

このツールを調べて。

社内ルールを作って。

問い合わせ対応を効率化して。

議事録も要約して。

マニュアルも作って。

セキュリティも見て。

研修もして。

いや、無理です。

AI担当者は万能係ではありません。

むしろ、最初は役割を分けた方がいいです。

社長や責任者は、何を優先するかを決める。

現場は、困っている業務と確認ポイントを出す。

AI担当者は、相談を整理し、試用ログを残す。

外部伴走者は、設計の抜け漏れ、入力ルール、ツール選定、実装の進め方を支援する。

このくらい分けると、担当者が潰れにくくなります。

総務省・経済産業省の AI事業者ガイドライン活用の手引き(案) でも、AIガバナンスは社内ルール、教育体制、責任者の配置などを含む組織的な仕組みとして整理されています。

小さな会社で、いきなり大企業のような体制を作る必要はありません。

でも、「担当者に全部任せる」は避けた方がいいです。

AI担当者がやるべきことは、判断を一人で背負うことではありません。

判断材料を見えるようにすることです。

たとえば、問い合わせ対応にAIを使うなら、担当者だけで「自動返信してよい」と決めない。

社長や責任者が、どの条件なら日程調整に進めるかを決める。

現場が、よくある問い合わせと注意点を出す。

AI担当者が、それをメモの型やプロンプトにする。

外部伴走者が、個人情報や運用負荷の観点から見直す。

こうすると、AI担当者は孤立しません。

AI活用は、担当者の頑張りで回すものではありません。

小さくても、役割分担で回すものです。

AI内製化は、担当者を孤立させず判断軸を社内に残すこと

AI担当者が社内に判断軸を残しながら内製化の道筋を作るイラスト
AI担当者が社内に判断軸を残しながら内製化の道筋を作るイラスト

AI内製化というと、全部を社内で作ることだと思われがちです。

でも、僕は少し違うと思っています。

AI内製化は、外部に頼らないことではありません。

外部に頼ったとしても、判断軸が社内に残る状態を作ることです。

どの業務にAIを使うのか。

どの情報は入れないのか。

出力を誰が確認するのか。

どこまで自動化し、どこから人が判断するのか。

この判断軸が社内にないまま外注すると、あとで運用が分からなくなります。

逆に、社内にAI担当者がいて、業務メモと試用ログが残っていれば、外部支援も使いやすくなります。

「この業務を自動化したいです」ではなく、

「この業務で、ここまでメモ化できています。入力ルールはこうです。試した結果、ここが詰まりました」

と言える。

ここまで整理されていると、外部側もかなり支援しやすいです。

AI担当者は、社内と外部をつなぐ翻訳者でもあります。

現場の困りごとを、外部に伝わる言葉にする。

外部の提案を、社内で判断できる形に戻す。

その間で、会社の判断軸を育てていく。

これが、カタチ舎の考えるAI内製化です。

すごい人を一人置くことではありません。

すごい仕組みを最初から入れることでもありません。

社内の仕事を聞ける人を決めて、小さな相談を集める。

業務メモ、入力ルール、試用ログを残す。

社長、現場、外部伴走で確認する。

この順番で進めると、AI活用は社内に残りやすくなります。

もし今、「AIを使いたいけど、担当者がいない」と止まっているなら、まずは詳しい人探しを少し横に置いてみてください。

最初に決めるのは、AIに詳しい人ではなく、業務を聞く人です。

そこからなら、小さな会社でもAI内製化は始められます。

カタチ舎では、生成AIの導入テーマ整理、社内ルール、業務メモの型化、担当者育成、運用ログづくりまで、実務に残る形で一緒に設計しています。

自社の中で誰をAI担当にすればよいか、どの業務から試せばよいかを整理したい方は、お問い合わせ からご相談ください。

いきなり大きなシステムを作る前に、まずは社内に残る判断軸から整えていきましょう。

Author

村上龍平

カタチ舎代表。言葉、生成AI活用、資料・Web制作を行き来しながら、事業の考えを届く形へ整理しています。

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